『パラノマサイト』レビュー : 開始10分でグイグイ引き込まれる本格ミステリ

2023年3月9日に発売された、スクウェア・エニックスの新作ホラーADV
『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』をクリアしたので
評価と感想を交えてレビューしたいと思います。

全くノーマークのタイトルだったんですが、びっくりするくらいの名作でした。
ちょっとでも気になるなら是非プレイして欲しいです。

もくじ

1. どんなゲーム？
2. 良い点
   1. 進めたくなるシナリオ
   2. キャラ作りが丁寧
   3. 謎解きが楽しい
3. 気になった点
   1. オチが弱い
   2. UIは褒めるところがない
4. 総評・まとめ

どんなゲーム？

テキストを読んだり、選択肢を選んだりして進めていくテキストアドベンチャーです。
ゲーム性よりも、お話を楽しむタイプの作品。

シナリオ的には、「呪いで人を殺せる能力」を得た男女数名による能力者バトルもの、といった感じ。
この「呪いの力」そして「蘇りの秘術」を軸に、全体の大きな事件の真相を追いかけていきます。
デスゲーム感ありますね。

舞台は昭和初期の日本。
地元に根付いた怪談「本所七不思議」の謎を追うところから始まります。

死や霊的な現象をテーマにした話がたくさん出てきますが
ホラーとしてはそこまで怖くないので、ミステリアドベンチャーとして楽しめる仕上がりだと思います。

ゲームの流れ

[Rスティック]でカメラを回して、自分の周囲を見回し
気になるところを調べることでゲームが進んでいきます。
「人物」を調べれば会話する、といった感じです。

パノラマ写真のように、360度見回せる場所などもあったりして
ホラー演出と非常に親和性が高いです。
実際、プレイ中はかなりびびりながらカメラを動かしていました。

会話パートでは、会話内容を選んで情報を聞き出したり
時には正しい選択肢を選ぶことが求められたり等、
一般的なアドベンチャーゲームとだいたい同じようなシステムになっています。

自身が持つ「呪いの力」を行使できるコマンドもあります。
使うかどうかはプレイヤーの判断しだい。ヒリつきます。

ストーリーチャート

本作は、主人公は1人ではありません。
数名のキャラクターの視点から物語を追っていく形になっています。

「ストーリーチャート」という形でシーンごとに切り分けられているので
進めたいシーンを選んでプレイしていくことが可能。
もちろん、クリア済みのシーンを読み直す事もできます。

1つ1つのシーンが短めなので、プレイに区切りもつけやすいですね。

キャラクターの行動が複雑に絡み合うつくりの物語になっているので
あるキャラクターで特定の行動をすると、別のキャラクターのシーンで起こる事が変わったりします。
いろんな視点をかわるがわるプレイしていく感じですね。

資料を確認しよう

ゲーム中は、メニュー画面からいつでも各種資料を確認できます。
「人物リスト」以外にも、七不思議の詳細や世界観設定などがあり
攻略のための重要なヒントが書かれていることも。

なので、要所要所で資料を読みながら進めていく事がだいじ。
フレーバーとしてもかなり作り込まれている印象です。

良い点

進めたくなるシナリオ

とにもかくにもシナリオが面白いです。
序盤こそホラー感強めなものの、途中から一気に本格的なミステリになっていきます。
徐々に謎の全貌にせまっていく感覚は、やはりこのジャンルならでは。

物語の導入と、プレイヤーへの動機付けが非常に巧いので
プレイ開始から10分程度で、すでにがっちりと心を掴まれます。

そして、そのままの勢いでガンガン進めていきたくなる感じです。
まんまとハマってしまう巧妙さはお見事。

キャラクター同士の会話中心で進んでいくので、読み進めやすいのもポイントですね。
地の文はかなり少ないです。

全体のボリュームとしては、詰まらずに進めばクリアまで10時間程度で
数字だけ見れば短めに感じますが
プレイ中の1分1秒が非常に濃いので満足感・充足感は十二分にあります。

キャラ作りが丁寧

まず、ビジュアル面から。キャラグラは非常にイイです。
2Dイラストなので、初報のトレーラーで見た時は低予算感を感じたものですが
プレイしてみると全く安っぽさを感じません。

物語の雰囲気にすごく合っているし、ポーズや表情の差分も豊富で
背景から浮いた感じもなく、画作りはかなり丁寧にディレクションされている印象です。
カット割りなどの演出面もしっかりしていて、見ていて飽きないですね。

キャラクターも立っていて、キャラクター同士の掛け合いが軽妙なので
すごく楽しく読み進められます。

話の設定が重要なこの手のジャンルでは、キャラは相対的に弱くなりがちですが
しっかりと個性を持たせて作られているのは凄いと思います。
老若男女、バリエーションも豊富です。

謎解きが楽しい

謎解きのトリックというかギミックは非常に良く出来ています。
私はこういうの好きですね。
ヒントも分かりやすく、解けたときの「なるほどねー」はやっぱり楽しいです。

ただ、割と頭を柔らかくして考えないと解けないものも一部あるので
詰まってしまうと、ゲームが停滞してしまう場合もあるかもしれません。
この辺の良し悪しは、人によるところがあると思います。

気になった点

オチが弱い

惜しいです。本当に惜しい。
ラストの展開がいまいち盛り上がりに欠けます。
人によっては、展開に納得できないという場合もあるかもしれません。

特に、ラストに向けて謎がどんどん解明されていく疾走感や
伏線の意味に気付いた時の「そうだったのか！」という感覚がめちゃくちゃ気持ちよくて
期待感があっただけに、本当にもったいないという印象です。

ちょっとミステリ的展開に寄せすぎちゃったのかなあという感じ。
ゲームなので、「これまで頑張ってプレイしてきて良かったな」と思わせて欲しいところです。

UIは褒めるところがない

本当に申し訳ないですが、UIに関してはさすがに
もっとやりようあったでしょという印象。操作性は最悪です。

何というか、いまいち思い通りに動いてくれない感じで
資料の各項目を選ぶのすら苦心するうえに
肝心の資料はテキストをただ流し込んだだけで、読ませる気あるのかなという気さえします。

内容を把握しておかないといけない資料もあるので
ゲームプレイを阻害する要因になっているのがもったいなく感じます。

総評・まとめ

総じて言えば、個人的には「大絶賛」と言える評価です。
失礼ながら、まさかこんなに面白いとは思ってませんでした。

多少の不満はあるものの、プレイ中は本当に夢中になって進めていたので
問題点については次作での改善に期待、といったところでしょうか。
シリーズ化お願いしますまじで。

久しぶりに、「睡眠時間を削ってでも進めたいゲーム」が出てきたな、という感慨。
冒頭でも書きましたが、ちょっとでも気になったらやってみて欲しいです。

今回のポイント

• シナリオがめちゃくちゃ面白い
• キャラの掛け合いが楽しくて読みやすい
• ビジュアルも含め雰囲気は抜群

タイトル	パラノマサイト FILE23 本所七不思議
メーカー	スクウェア・エニックス
発売日	2023年3月9日
定価	ダウンロード版 / 1,980円